第二次意見申し入れの<<拠出不支持部分>>に対し
寄せられた「よくあるご質問」(FAQ)への
わたくしたちからの回答です!


今後この種の議論を出来る限りご紹介したいと思っております。


質問:なぜ、戦後復興費を日本政府が拠出してはいけないのですか?

回答承知のように、イラク戦争は米英両国がいわゆる国連決議なしで行っている戦争です。当然国連憲章にも違反しています。米英両国は決議1441などがある。それが論拠だと後になって弁明しています。しかも、イラクはそれらを遵守しなかったと。しかし、国際社会の認識は、安保理の場でも世論も決議1441等を米英がイラクを先制攻撃する論拠として認めていません。

 戦後復興への日本政府の拠出ですが、日本政府は常々、米英の先制攻撃に関して国連決議がなくイラク攻撃をした場合でもやむをえず支持はするが、戦後復興費は負担できない、と明言してきました。

 日本政府ですらそう明言している戦後復興費への拠出に関し、私たちが今になって戦後復興への国際合意(復興に関する国連主導や場合によってはそのような国連決議)があれば拠出してもよい、とするのは明らかに間違いです。もともと、何ら正当性がない米英によるイラクへの先制攻撃です。日本政府が公言しているように、決議(これは新決議の意味)なしのイラク戦争の戦後復興に日本政府は一円たりとも拠出してはいけないのです。

 もし、戦後復興への日本政府の拠出を認めるなれば、正当性のない米英のイラク戦争を私たちが認めることになります。日本政府は上記を言明した手前、今のところ「人道支援」の名目でしか一切の拠出ができないのです。
(青山貞一)


質問:日本政府が戦後復興に拠出でないとして、戦後復興に際し何か提案すべきことはありませんか?

回答:米国主導はもとより、国連主導であってもイラクの戦後復興は透明性と公平性を高く保つ形でおこなわれなければなりません。

 
周知のように米国政府は、ブッシュ政権のお膝元のテキサス州などの企業を戦後復興や石油ビジネスに関与させつつあります。すでに随契約に近い方法で業務発注をしているものもあります。

 今のままでは米国は各国から戦後復興費を拠出させた上で、「戦勝国」の産業、企業に復興事業を優先的に回す可能性が極めて高くなっています。

 
具体的な方法としては、たとえば拠出国間で完全な国際一般競争入札を行い、復興業務の発注を行うことがあります。これにより米国、さらに言えばブッシュ政権に関連する企業などに復興事業が優先的にまわらないように監視する必要があります。

 同時に、米国政府から米国ないし米国系企業への特命随意契約を回避し、拠出金の有効な活用をはかるのです。今のままでは世界各国から金を集め、戦勝国、勝てば官軍で金が落ちる、回ってしまうことが明らかです。
(青山貞一)


質問:では、イラクへの人道支援で拠出するのどうでしょうか?

回答:わたくしたちは人道支援への拠出にノーを言っているわけではありません。しかし、「人道支援」であれば何でもあり、と言う考え方には賛同できません。これについて賛同人のひとりから以下が寄せられました。

 今回のイラク戦争の戦後復興費負担に関し、米国は以下にあるように、人道支援費についてダブルスタンダードを示しています。
     
 世界食糧計画(WFP)は(責任者はブッシュが推したジェームズ・モーリス氏)現在アフリカの4,000万の人たちが飢えの危機にあり、その人々への援助に必要な資金は8億ドルとしています。

 それに比べて、米英軍による破壊から生まれたイラクのための人道支援には、6ヶ月だけで18億ドルが必要だとしています。モーリス氏自身「これは二重基準だ」といっている状況です。

こういう無責任で不公平なイラクへの“人道援助”と呼ばれるものに拠出することは許してはならないと思います。

WASHINGTON - As the world mobilizes to pour aid into war-wracked Iraq,> contributions of food aid to nearly 40 million needy Africans are lagging dangerously, according to the head of the UN's World Food Programme (WFP), American James Morris.

  In a statement to the UN Security Council this week, Morris said his agency  was "deeply concerned" about the plight of Iraq's 27 million people, and has launched what may become the WFP's "largest single humanitarian operation in history," likely to cost $1.3 billion over six months.

  But, said Morris, almost 40 million Africans, most of them women and children "(who) would find it an immeasurable blessing to have a month's  worth of food," are currently in "greater peril" than Iraqis, but the WFP has only been able to raise $800 million out of an estimated $1.8 billion > it needs to adequately cope with the crisis.

"As much as I don't like it, I cannot escape the thought that we have a double standard," he told the Security Council. "How is it we routinely accept a level of suffering and hopelessness in Africa we would never accept in any other part of the world," he asked. "We simply cannot let this stand."
(以下省略)

出典: Published on Friday, April 11, 2003 by OneWorld.net 
'Double Standard' for Food Aid to Iraq, Africa?  by Jim Lobe


質問:誰が破壊したイラクの戦後修復費を払うべきでしょうか?

回答:これについては、呼びかけ人のひとり、田中 優さんから以下の意見が寄せられていますので、参考にして下さい。

 
アメリカは旧ユーゴ爆撃をした後、復興会議を開いたがその資金を提供しなかった。アフガンでも自ら爆撃しておきながら、その復興費用は日本などが分担すべきものだと主張して負担しなかった。しかもアフガンのカルザイ議長は復興会議が始まっているのだから爆撃を中止するよう要請したが、それすら認めなかった。片手で爆撃を続けながら、その一方で建物を復興して何の意味があるだろう。

 日本政府が援助してパレスチナに建てた建物も、昨年のイスラエルの一方的な攻撃の際に爆撃されて粉々にされた。この資金もアメリカの援助によるものだ。しかし日本政府はそれに抗議すらしていない。そして今回のイラクでも、日本は復興費用の拠出を求められている。しかも復興に関わる企業はほぼアメリカ企業が独占し、国連の関わりすら拒否している。その一方、副大統領を出したハリバートン社はさっさと受注を決めている。

 戦争はアメリカにとって、巨大な公共事業として機能している。国民の5%以上が常に勤務し、毎年日本の実質予算と同額が支出される。日本の公共事業との違いは、人々の生命を直接破壊しながら、資金の出所が他国であることだ。しかもドルは国際的な決済通貨であるために、ただ印刷しただけで価値あるものとして扱われる。これを放置するなら、戦争は失業や不況の時に求められる危険な手段となるだろう。

 これを止めていくためには、資金提供しないことが重要だ。アメリカが破壊した建物を再建するのに日本がカネを払い、しかもアメリカに受注する権利があるとするなら、なるべく多くの破壊を行った方がトクになってしまう。今、国際的な決済にユーロが多用されつつあるのは、アメリカの不合理性に国際経済が見切り始めたせいではないか。日本がいつまでもアメリカに従うのは、もはや得策とは言えないだろう。
(田中 優)


質問:国連主導なら戦後復興費を拠出しても良いのではないですか?

回答:これについては、呼びかけ人のひとり、大河内さんから以下の意見が寄せられていますので、参考にして下さい。


 国連というのは「場」に過ぎないと思います。国連が常に正しいということはありません。そもそも安保理の常任理事国は第2次大戦の戦勝国であり、「勝ったほうが正義」という論理の上に立っています。

 そして「世界人権宣言」という世界のルールを権威づけたことはありましたが、同じ年に住民の意思や現状を無視して採択されたパレスチナの分割決議と、翌年のイスラエルだけの独立承認が、現在のパレスチナ問題を生み出したと言えます。

 また、カンボジアの内戦が長期化した背景には、国連がポル・ポト派を含む亡命政権を承認し、議席を与えていました。それを理由に日本政府も国内へは眼を向けず、見せしめ的に実質的な経済制裁を行い、人々の中の溝を深くしていきました。

 また、次元は違うように思われるかもしれませんが、アフリカの人々と話すと、「援助」とか「開発」を振りかざし特権階級化している国連スタッフに対する不満や敵意を噴出させられることがしばしばです。とくに冷戦後は、西側先進諸国の道具として機能してきた面が多々あり、私は日本の国連中心外交(今はどこかへ言ってしまったようですが)を批判してきました。

 このように「怪しむ」ことは必須ですが、一方、それを全世界の「市民」の道具にしていくことは十分可能だと思います。「NGO」というのがもともと国連用語であるように、国家間の調整機関であるだけでなく国家を超えた価値観を具体化する機関として、今後は国連自体をNGO化していくべきだと考えます。そのためには、市民・NGOの参画をより強度にし、国際世論、国際監視を強めていくシステムを作り、「国家の寄り合い」としての組織以上の「現代の権威」を付与することをめざすべきだと考えます。
(大河内秀人)


質問:援助として戦後復興費を拠出するのはどうでしょうか?

回答:これについても、呼びかけ人のひとり、大河内さんから以下の意見が寄せられ
ていますので、参考にして下さい。


 
「援助」とか「復興支援」というのは、まず怪しむべき対象です。

 カンボジアのことを思い出すと、「戦場から市場へ」の掛け声のもと、それまで見せしめ的「経済制裁」状態で「孤立」の厳しさを味あわせていた国や企業が挙って流入し、プノンペンの高級ホテルが日本人ビジネスマンで溢れていました。本来、戦争さえなければ、外から持ち込まなくても1000万足らずの人々が十分食べていける肥沃な国土を持つ国で、困難な状況でも地道に地域を守ってきた人々の精神を弄ぶような開発と投資が行われています。日本からも余計な農薬援助をして、かけがえのない土地と水を危機に陥れました。年収数百ドルの人々の中に、日当200ドルの自衛官をはじめ兵士を送り込んで、HIV感染者を広げました。人心の荒廃と政治の腐敗をもたらしながら、力で「発展」や「豊かさ」のモデルを押し付けるやり口は、私たちも記憶するところではないでしょうか。

 人道援助についても慎重であるべきです。人道援助と言えど、外部からのinputは、地域の人々に大きなマイナスのインパクトを与える危険性があります。まして紛争が絡んでいるとなると民族・宗教・政治・その他の集団による分捕り合戦を招き、分断の溝をさらに深め、新たな力関係、対立の構図ができます。同情と共感が援助の起点になることは自然なことですが、ここ数十年の世界は、やっていいこととやってはいけないことを十分学んできたはずです。

 どうしても必要な緊急の救命救急的なもの以外は、現地の自立した行政が整い、そこがイニシアティブを取れるようになるまでは控えるべきです。医療や食糧など緊急のものにしても、たとえば英語か仏語といったことも含めシステムが先に入った方が後々のマーケットで優位に立つことにな
ります。
 それまでの権威が崩壊し、不信感、不安感の中で暮らす人々にとって、他文化の「善意モドキ」ほど文化と人心を崩壊させるものはありません。とくに父権の強い世界で、子どもや若者が外国文化に毒され、自分の文化や自尊心を失っていくことは、大きな社会のストレスとして何十年後になればなるほど、取り返しのつかない喪失になります。

 そういった危険性を前提に、衆目の中でチェックしながら最低限のことを進めていくというルールがない限り、復興支援も控えるべきです。ましてそもそもが占領を含めた勢力構造の転換が不当に意図されたイラクにおいては、なんとしてでも悪しき実例にしてはなりません。
(大河内秀人)


質問:では、日本政府、私たちはなにをすべきでしょうか?

回答:わたくしたちは人道支援への拠出を否定しているわけでありません。しかし、「人道支援」ならなんでもよいか、と言えばそうではありません。果たして日本政府の人道支援がまともに現地で機能しているかどうか、過去現場をつぶさにみるなかで、大いに疑問を感じているからです。これはODAなどについても同様です。

 ではどうすべきかが問題ですね。

 私たちとしては、たとえば、「国境なき医師団」など国際的にみて実績も信頼性もあるNPO/NGOに日本政府そして私たちが拠出し、それらの団体を通じて人道支援をすべきと考えます。実際、アフガン戦争時には、「非戦」執筆グループは印税をそれらのNPO/NGOに寄付しました。

 私個人(青山)は「国境なき医師団」に印税の全額を寄付しています。
(青山貞一)


質問:とはいえ国連の役割はこんごもあるのではないでしょうか?

回答:確かにその通りです。わたくしたちも国連の役割を否定しているわけではありません。それは以下のような理由からです。以下はsustainability for peace「非戦」等本を生み出したグループです)内での議論の一部です。参考にして下さい。


 
わたくしたは国連至上主義ではありません。もともと国連は「勝ち組」が作ったものであり、アメリカ主導で作られたものです。ですから、ニューヨークにあります。

 ところで、イラク戦争に「勝った」、ネオコン主導のアメリカは、国連を介さずとも、面倒なしに世界を「統治」できると確信しつつあり、国連抜きの外交(もはや外交とは呼べない)に傾きつつあるようです。

 現在の状態は、

1)アメリカが面倒な国連から足をあらう
2)アメリカぬきの国連は意味をなさないので、崩壊 
3)アメリカは自分の息のかかった国(おどせる国)だけ集めて、国連に代わる何らかのオーガニゼーションを作る
4)EUのブロック化が強まり アメリカ圏と対立が強まる

という危ない岐路に世界は立っていると思います。

 わたくしは現実的に、現在国連以外に、一定程度の「公平さ」をもって、世界各国の意見をすくう調整機関(フォーラムとしての)がないいじょう、やはり国連の機能を強化するより、他にオプションは他にないように思います。

 軟弱なようですが、ブレアのように、なんとか国連という調整の場に「帝国アメリカ」をつなぎとめるしか、手はないように思うのですが・・・・。