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2003年4月2日
最大の自然環境破壊は戦争である
〜戦争の即時停止を求める〜

WWFジャパン職員有志一同

◇この声明は自然保護に携わる個人として発信するものです。

 私たちは、戦争およびテロ行為など人間の尊厳と安全を脅かす行為に反対します。武力行使は、一般市民の生命を脅かし、新たな憎しみと混乱を招きます。また、このような行いは、人々の生命を奪うだけでなく、私たちの生活環境を含む自然環境にも深刻な打撃を与えます。

 私たちは、日頃、生態系の保全と生物の多様性を維持することをめざして活動しており、それらを破壊する行為を容認することはできません。

 第二次世界大戦をはじめとする国際紛争は、多くの人々を犠牲にし、自然環境をも大きく破壊しました。ベトナム戦争では、ベトナムの緑が約40%失われたといいます。また、湾岸戦争では、原油の流出や油井の炎上などでペルシャ湾沿岸の生態系は深刻な打撃を受けました。原油の流出は、沿岸の海洋生物の生息域を汚染し、多数の魚や海鳥などを死滅させました。また、油井の炎上は、大気汚染を引き起こし、気象にまで影響を及ぼします。これらは農作物の収穫や漁業の漁獲量にも影響を与えたとみられています。これら、生態系への悪影響は計り知れないほど深刻なものです。

 3月20日に開始されたアメリカ軍・イギリス軍などによるイラク攻撃は、イラクの人々の生命を奪い、財産を破壊するばかりでなく、自然環境へも大きな悪影響を及ぼします。それは、この地で暮らす人々から、今後何年にもわたって、安全な生活環境を奪い取ることをも意味しています。

 日本国憲法前文には、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とあります。これは日本がとるべき立場を示唆しています。

 世界で生じている不公平や貧困の問題は、武力では解決しません。これらの問題を解決するため国際協調の努力を続けるべきです。しかしながら,日本政府は米英軍などによるイラク戦争を支持しています。これは日本国憲法を踏みにじる行為であり、決して認めることはできません。

 私たちは、すべての人間の尊厳と安全が保障され、人間と自然の共生が実現する国際社会を求めます。私たちは、アメリカ政府・イギリス政府に対して、国連憲章にしたがい、イラク攻撃を即時中止して、平和的な解決方法を採るよう強く要求します。

新井秀子、鮎川ゆりか、石原明子、大貫博子、尾崎晴子、河崎和則、川村昭子、河村由美子、清野比咲子、草刈秀紀、小林祥子、小林孝、小森繁樹、権田雅之、佐藤哲、佐久間浩子、塩野明日香、関美穂、高田佐紀子、高田英明、竹村真由子、東梅貞義、長沼さちえ、羽鳥信行、花輪伸一、早川留美子、前川聡、増田美津穂、南洋子、横関祐里子、吉田昌紀、和田つぐみ

 この件に関するお問い合わせは、佐久間、清野(TEL 03-3769-1713)まで。

■イラク戦争に対するWWFの考え方

 あらゆる戦争は、人々に対して、物理的にも精神的にも破壊的な影響をもたらします。
 WWFの専門分野は自然環境にあり、自然保護団体としてWWFは、戦争が野生生物及び重要な生息地、自然環境に与える影響に関心を集中しています。 戦争による人々の被害に次いで、イラクにおける軍事行動は、イラクの淡水生態系と自然資源に対して深刻な影響をもたらす可能性があります。最悪の場合には、地表と地下水が、石油やその他の工業用化学物質、下水によって急速かつ広範囲に汚染されるという結果が、爆撃作戦によってもたらされることも懸念されます。このような汚染によって多数の死者が出る可能性があります。現在残っている漁場は激減し、あるいは、汚染され、その結果、イラクの人々から重要な蛋白源とカルシウム源を奪うことになるでしょう。

 WWFはあらゆる勢力に対し、イラクにおける現在の危機の平和的解決を目指すことを求めます。

                WWFインターナショナル事務局長 クロード・マータン

 *WWF(World Wide Fund for Nature)は、世界50カ国以上にネットワークを持つ国際自然保護団体です。ネットワークの中心は、スイスに事務所を置くWWFインターナショナルです。